県立松山南高等学校の玄関の右にある校舎の壁に「祝受賞 第39回大宅壮一ノンフィクション賞 城戸久枝 第45期卒業生」の大きな垂れ幕が掛かっています。彼女は講談社のノンフィクション賞も受賞し、史上最年少のダブル受賞となりました。「あの戦争から遠く離れて」というタイトルです。

両親と祖父母のこと、そして「あの戦争」のこと、それにまつわる日本と中国の歴史のことなど、彼女自身に繋がる歴史の一つ一つを知るために10年がかりでこつこつと足跡をたどり、まとめたのがこの作品です。

前半はお父さんの城戸幹さんが「孫玉福」として過ごした戦後間もない中国での壮絶な日々、後半は城戸さん地震が中国へのホームステイをきっかけに中国留学を決意し、そこでお父さんの足跡をたどったことが書かれています。どちらの時代にも共通して言えるのは反日感情。それは戦後何十年と経った今でも深く根付いています。しかし、そんな反日感情の仲でも、お父さんを親異常に育ててくれた中国のお母さんをはじめ、お父さんとかかわった中国の人たちの愛情、城戸さんが訪問した時には「孫玉福」の娘として大歓迎されたことなどが詳しく書かれています。 今、書店には中国のことを書いた本や雑誌がならんでいますが、城戸さんのように中国をじっくりと見つめ、歴史の事実を忠実に書いているものは少ないのではないでしょうか。

さて、私と城戸さんの出会いは1冊の本の出版でした。10年前、26歳で亡くなったボスニア・ヘルツェゴビナで平和活動をしていた安井伸君(松山市出身)のことを書いた「モスタルの石橋」(愛媛新聞社発行)が出版できたきっかけを作ってくれたのが城戸さんでした。その後、城戸さんは東京でライターとして頑張っていましたが、あの若さでこのような大作を書き上げたことに驚きました。このような大賞を受賞したことは私達愛媛県民にとって誇りです。

城戸さんに「中国が好きか」という質問をしたら「好きな部分もあるし、嫌いな部分もある」という答えでした。今後、この作品をスタートとして、民衆の生の声や活動の様子を私達に伝える作品を出してくれると思います。

ノンフィクションライターとして、ますますの活躍を期待しています。

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